conditioning

It’s just a tool!! – 単なる道具にしかすぎない!

私がアメリカの大学でStrength and Conditioningのアシスタントコーチであった時の話です。

9月の新学期になると、当時500名ほどいた強化部の選手たちの新しいトレーニングプログラムが始まります。各部の最初のセッションはオリエンテーションで、私のボスが選手に向けて話をするのですが、必ずする話しがありました。

広いウェイトルームにきちんと配置されたさまざまなトレーニング器具を指さして、”We have  a wide variety of equipments in this room, but it’s just a tool!” 「この部屋には本当にいろんな器具がある。でも、単なる道具にすぎないよ。」と言います。もちろん、どうしてそんなことを言うのかという説明が後に続きます。その言葉に秘められたメッセージは、「どんな選手にとっても、上半身のKing of Exerciseはベンチプレス!ということは決してないし、そんなことは全く大事ではない。むしろ、本当に大切なことは、『何を』、『どういう方法で』やるかということだ」ということでした。

 

 

龍谷大学の長谷川裕先生が、昨年出版された『VBT-トレーニング効果は「速度」が決める』という本の中で、どういう方法でやるかは大切だが、『何をやるか』はもっと大切ということを書かれています。つまり、『何をやるか』にとことん向き合うことは、その選手やクライエントが抱えている課題をしっかりと抽出し、それを解決するために『何をやるか』ということをじっくり考えることにつながるからです。

対象者がアスリートで、強化したいのは上半身で、ウェイトルームにはラックがあるから・・・それじゃ、ベンチプレスを覚えておこうか、はちょっと短絡的かもしれませんね(笑)。ベンチプレスができるに越したことはないですが、それは、すべてのアスリートの上半身強化の課題解決になるわけでは決してないし、細かな話をすれば、かえって足枷になってしまうようなこともあるかもしれません。

1人1人の選手やクライエントが抱えている課題や叶えたいとイメージしているゴールにしっかりと寄り添って、そのうえで掲げるべきクリアな目標を設定し、それをベースに何のトレーニングが必要なのかを1つ1つていねいに組み立てていくと、自ずとプログラムで採用すべき種目とそうでない種目が整理されていき、最終的にトレーニングプログラムは非常にシンプルなものになることが実は多かったりします(笑)。偉そうに書いておりますが、私自身もこれまでに多くの失敗を積み重ねており、あれもこれも、とたくさんの種目がプログラムの中にちりばめられ、肝心の選手たちはプログラムの意図を理解しきれず、当然のごとく効果も中途半端という結果が多々ありました。

話を少し膨らませれば、トレーニングの初心者や高齢者にはマシンを中心にとか、バーベルやダンベルを用いるのは上級者やアスリート向け、というのもこの話に該当するかもしれません。なぜなら、最初から決め打ちでそのように持っていくのは、どういうトレーニングを、が先行してしまい、問題解決をするために何をしたらいいか、が後回しになっているからです。

 

 

老若男女を問わず、運動レベルにかかわらず、先入観にとらわれることなく、日常やスポーツにおいて最高のパフォーマンスを発揮してもらえるように、1人1人に必要なズバッとハマるトレーニングを見出せるよう、日々努力をしていきたいものです!

Youtube-Strength Me

Youtubeで配信しているStrength Meでは、コンディショニングの中のストレングス(Strength FOR Conditioning)という観点で、たくさんの動画を配信しています。

みなさまのConditioningにお役立て頂ければ幸いです!

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