conditioning

似て非なるもの-ウェイトリフティングとパワーリフティングとボディビルディング

「自分の競技パフォーマンスを上げるためにトレーニングを始めたいんですけど、まずはBIG3やったらいいですか?」

「パワー上げるとしたら、やっぱりクリーンですか?」

「競技パフォーマンスを上げるためにトレーニングをやっていて、”胸の日”、”背中の日”、”足と肩の日”みたいな3分割プログラムでやってるんですけど、これでいいですか?他にいい方法ありますか?」

このような質問をいただくことがあります。私もかつて同じような疑問を持っていました。そして、めちゃめちゃ悩みました(笑)。経験値が増えていく中で多少なりとも理解できたことは、答えを探すためにはそれぞれの質問に出てくるキーワード、”BIG3″、”クリーン”、”3分割プログラム”のルーツとその発信源となっているスポーツ競技の特性を探る必要があるのかなと思います。

最初は、BIG3という言葉。たいていの場合は、スクワット、デッドリフト、ベンチプレスを指しているかなと思います。下のイメージ写真ような種目です。

 

 

この3つの種目の合計重量で競い合うスポーツがパワーリフティング。数あるスポーツの中で、単純に最大筋力というものにフォーカスして行われる競技です。ですので、挙上するスピードが速かろうが遅かろうが、ルールに則って少しでも大きな重量を挙げれば勝ちです!

多くのスポーツで必要なパワー出力を上げるために大きな力は必要です(パワー=力xスピードなので)。しかし、パワーリフティングから派生して生まれたこのBIG3のコンセプトには、そもそも”スピード”という考え方はあまりないのかなと思うので、これら3つの重量を追求しまくっても、パワーを上げていくためには、もう少しパズルのピースが必要なんじゃないかな、というところは否めません。パワーリフティングという言葉でこんがらがってしまいがちですが(かつて、私も思いっきりそうでした・・・笑)。

次に、クリーンという種目。これは、ウェイトリフティングの競技種目である、クリーン&ジャーク、そして、スナッチの中で登場します。下のイメージ写真のような種目です。オリンピックでも登場する競技なので、なんとなく、見たことある、という方もいるのではないでしょうか。

 

 

 

パワーリフティングのように、クリーン&ジャークとスナッチの合計重量で競い合うスポーツがウェイトリフティング。パワーリフティングとの違いは、頭上までバーベルを一気に挙げなくてはいけないので、卓越したテクニックやスキルはもちろんですが、パワーリフティングで求められるような大きな力を出す能力に加えてスピードも必要となります。つまり、大きなパワー出力が求められるのです。当然のことながら、トップのウェイトリフターには、大きなパワーを出せる選手が多くみられ、そのことから高いジャンプ力を持ち合わせています。

このような背景から、瞬発力につながるパワー出力を上げるためにクリーンが用いられることがあるのですが、クリーン自体は、クリーン&ジャークの中の一部であり、もっと言えば、スナッチを含めた総合的な練習をすることで、トップのウェイトリフターが持っている大きなパワー出力を身に付けられるのではないかな、と思っています。となると、クリーンだけを練習しても、パワー出力を上げるためには、ジャークやスナッチなど他のピースもあった方がより効果的に確実に目的を達成できるような気がします。

最後に、3分割で行うプログラム。これは、ボディビルダーが自分の肉体をつくり上げ、美しく魅せるために用いるプログラムデザインの方法ではないかと思います。ボディビルディングは、そうして鍛えられた身体の筋肉の発達度や美しさ、またバランスなどを競い合うスポーツです。下のイメージ写真のような種目です。パワーリフティングやウェイトリフティングと違って、ボディビルディングは逞しくも美しさを兼ね備えている全身の筋肉をバランスよく鍛えていかなくてはいけません。力強い動作やパワフルな動作というよりも、筋肉1つ1つを磨き上げるといったことに焦点が当たるので、動作に着眼したアプローチではなく、当然のことながら、ターゲットとなる部位を1つ1ついかに逞しくさせるか、美しくさせるかがトレーニングの重要なポイントになります。

 

 

このように考えていくと、日常やスポーツのパフォーマンスを上げる目的で、このような3分割のプログラムなどを用いると、なかなか期待するような成果につながりにくいんじゃないかな、と思うところがあります。その一方で、見栄えとしての美しさや逞しさをつくる目的でこのような方法を用いることは、他の方法に比べて最も効果的な方法と言えるんじゃないかな、と思います。

このように見ていくと、いろいろなことに気付かされます。どれもバーベルを用いてトレーニングしていきますが、それらは道具であって、目的によって使い分けることが大切です。また、例えば、全身のパワーを上げることが目的であれば、ウェイトリフティングで用いられる種目に取り組みつつ、ベースとなる大きな力を引き上げるために、パワーリフティングの練習方法をアイディアとして活用して、力を引き上げる練習をしても良いかもしれません。その上で、力がうまく発揮できず、統合的に全身で力を出す上でボトルネックになる部位やパーツがあれば、ボディビルディングの要素を取り入れ、ターゲットを絞ってそれらの部位やパーツを鍛えるのも効果的なアプローチになるかもしれません。

身体の動作や力発揮は本当に複雑なものなので、それらが1つのトレーニング方法や理論によって引き上げられることはなかなか難しいことなのかなと思います。特効薬といったものはトレーニングの中にはなく(残念ながら)、特徴や効果を理解した上で、うまく組み合わせながら、ある意味ではいいとこ取りをしてプログラムを組み立てることが大切かな、と思います。

偉そうに言っておりますが、たくさんの失敗を重ねていろいろなことに気づき、失敗や誤解の数々を曝け出して(笑)、私が理解している部分をお伝えさせていただきます。

みなさまのHAPPYなトレーニングプログラムのご参考になれば幸いです!

 

 

 

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